年末となりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。 このblogでのご報告が全くできずに申し訳ございませんでしたが、昨年12月にヴェロニカさんがお亡くなりになりました。この場をお借りして生前、大地窯の諸活動にご厚情いただきました皆さまに感謝申し上げます。 さて、私は昨年12月1日にヴェロニカさんにお会いしましたが、これが最期のヴェロニカさんとの会話になりました。ここに少し経緯を記しておきたいと思います。 ここ数年、私も忙しさを理由に大地窯へもなかなか足を運べない日が続いていました。shootさんが上京した時に一緒に訪れたり、電話でたまにお話したりすることがほとんどでした。 降矢さんに最後にお目にかかったのはちょうど前回のblogを更新したときでした。ご病気をなさったという話をヴェロニカさんから伺っていました。がっしりとしたお体は昔と相変わらずでしたが、心なしか歩みが弱弱しくなっているのに気が付きました。でもまさかお亡くなりになるとは本当に驚きでした。 降矢さんのご葬儀の後、お香典のお返しをヴェロニカさんに渡さねばと12月1日にお宅にお邪魔しました。このとき体がとてもだるく、こうした動機がなければ私は間違いなくヴェロニカさん宅へはお邪魔しなかったでしょう。今思えば降矢さんが導いてくれたと感じています。ちょうど昼間に到着して間が悪い時間の訪問になってしまったと思いましたが、物音がしません。いつものように1階から「こんにちは」と声をかけてみましたが反応もありませんでした。誰もいないのかなと階段から2階を覗くとちょうど窓際に座布団を何枚か敷いてそこに横たわっているヴェロニカさんがいて、起き上がるところでした。猫たちも逃げずに珍しくヒマも部屋の中にいました。 あまりこういうヴェロニカさんをみたことがなかったので大丈夫か話を聞くと「なかなか死にましたね」という返事がありました。この表現はヴェロニカさん独特のもので、最上級に辛かった時にだいたいこういう言い回しになりました。体調が思わしくないので、朝型の生活から夜型の生活に切り替えて夜に作陶していることや、プーアル茶を薬に毎日飲んでいることをお話していました。ヴェロニカさんにお香典のお返しを渡すとスイスから取り寄せてくれたというスイスの古い建築の本を私にプレゼントしてくれました。この本は10月に一度渡したいとお電話をいただいていたのですが、仕事で伺えず、それきりになっていました。そして、私が書いた本を以前ヴェロニカさんにお渡ししましたが、これにサインを欲しいとお願いされました。私は本の見返しに日付と私の名前を書きました。ヴェロニカさんは青色が見やすいということで青いマジックで書きました。ヴェロニカさんは「ありがとう」と手を合わせておじきしてくれました。お香典のお返しを渡して帰ろうと思っていましたが、ヴェロニカさんは降矢さんのご葬儀のことを聞きたいとお茶を淹れてくれました。ただ、目の調子があまりよくなく、湯飲みと急須の位置がよくわからないようだったので、途中から私がお茶を淹れました。薪ストーブを囲んで椅子を並べて、お茶を飲みながらお話しました。 ヴェロニカさんはいつも人の目をみて話すことにだいぶ気をかけていて、目の調子が悪くなってからは、客人が帰った後にはよく、「私の目はあの人の目の方を向いていたか」とお気にしてました。それは客人でなくても私たちに対しても同じでした。ただ、このときテーブルでお茶を飲まなかったこともあったのか、ヴェロニカさんは対面でなく、私に寄り添うように隣で私でなく薪ストーブの方を向いて座っていました。このとき、私もそれを気にすることはありませんでしたが、今思えばだいぶ目の調子も体の調子も悪かったのだと振り返ります。 降矢さんのことをひとしきりお話した後、ふとヴェロニカさんが薪ストーブを眺めながら「私たちを縛るものは何もない。だから自由。何でも自由にできる。」とつぶやきました。このお話はヴェロニカさんが寝起きの時間を変えたり、食事をお茶だけにしたり、そういうことをおっしゃっているのかと思いましたが、私に向けたメッセージであることに気が付きました。この言葉がヴェロニカさんから私への最期の言葉になりました。 クリスマスイブの日、実家からヴェロニカさんの訃報を受けたときは全く信じられませんでした。正直言うと今この文章を打っているこの時も信じられていません。今でも私はヴェロニカさんとさよならできません。blogを長く更新できずにいたのはこうした理由もありました。でも少し歩みを進めることにしました。
ヴェロニカさんのご葬儀は龍泉寺さんが中心となってご尽力いただき今年の1月10日に執り行われました。参列者はここ数年、お目にかかれなかった方たちが大勢集合して、悲しさと同じくらい懐かしさも感じるひとときでした。龍泉寺の村上住職がヴェロニカさんの戒名について参列者から意見をもらいたいとお話になりました。ここで村上住職が「雲水」にしようと思っているとお話してくださいました。「雲水」とは修行する僧の意味だと教えていただきました。ああ、本当に「雲水」だと私は心からそう思いました。ヴェロニカさんは、作陶は激流を上流へ向けて歩いていくようだとおっしゃっていました。自らに修行を課して生きていました。このご葬儀の中で私も自らの中に「雲水」を意識して生きてみようと思いました。
その後、まもなくコロナウイルスの感染が拡大していきました。私は居を東京へ移したため、49日にも行けずに結局ヴェロニカさんのお墓参りにも行けない日が続いています。 ヴェロニカさんが今のこの世界のことをどのように見て考えてお話になるのか、思いをはせることがあります。もうその問いかけへの応答はありませんが、私の中のヴェロニカさんは「大変なことだけど、これをきっかけに人間の意識は良い方へ変わる」といいます。震災のときもヴェロニカさんはこうおっしゃっていました。なので、きっと今も。ヴェロニカさんは悪いことは良いことにつながることの前提にあるといつもとらえていました。最後にお会いした時も展覧会を開催することを考えていましたし、今の体だからできることがあると常々おっしゃっていました。
ヴェロニカさんが最期に遺してくれた「自由」という言葉。私にとって生きることの命題であり、その手掛かりは大地窯で過ごした日々にあったと振り返ります。ヴェロニカさんという大地窯の屋台骨を失ってしまいましたが、その意志は少なからず私には受け継がれました。私も「雲水」を心に日々を過ごしていきたいと思います。そして世界を自由に行き来できるようになったそのときには、また大地窯の活動を何らかの形で再開できればとも思っています。少しの間blogもお休みです。そのときまでどうか皆さまお元気でお過ごしください。 by masa #
by oochigama
| 2020-12-30 11:21
冷気日々増してきましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
このBLOGも新年のあいさつばかりになってしまったので、 この間ヴェロニカさん宅をお邪魔したときのことを報告したいと思います。 大地窯でともに活動をしていてこのBLOGにも度々投稿していただいた shootさんと久々にお会いましたので、これまた久々にヴェロニカさん宅へ お邪魔することにしました。 ちょうど作業をしているときにお邪魔してしまいました。 作品もいくつかロクロの上にできあがっていました。 二人してお邪魔するのは7年ぶりくらいで、ヴェロニカさんも随分と 驚きでした。 薪ストーブを囲んでお互いの近況などをお話ししました。 ヴェロニカさんは金子兜太先生の俳句が最近マイブームとのことで 日本語を勉強したいとおっしゃっていました。 トラちゃん、ヒメちゃんは相変わらず元気です。 だいぶ人懐こくなった印象を受けました。 あとヒマくんという猫ちゃんも仲間に加わったようです。 写真を撮り忘れてしまいましたが、大地窯の森林もだいぶ大きく なりました。 暖かくなったらまた皆で会いたいねという話をして別れました。 このBLOGをはじめて来月で、もう10年になるのだと月日が経つのは あっという間で驚かされます。 不定期更新ですが、まだまだ続けていきますので、引き続き ご愛護くださいませ。 by masa #
by oochigama
| 2017-11-27 20:45
| 活動コラム
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。 こちらのBLOGも長く更新しておらず、ご心配をおかけしたかもしれませんが、 ヴェロニカさんは日々作陶にいそしんでおられます。 久しぶりに昨年末ヴェロニカさん宅をお邪魔しました。 展示会への意気込みや近況についてお話を伺いました。 大地窯の森林もずいぶんと大きく成長していました。 大地窯の活動が今年もさらに発展していくことを祈っています。 by masa #
by oochigama
| 2017-01-01 14:54
| 活動コラム
秋らしい爽やかな晴れ間が見られるようになりました。
皆様いかがお過ごしでしょうか。 根津「LIBRE」での大地窯展覧会が近づいてまいりました。 こどもとアーティストの出会いの場をつくる「もび」では、2013年より約1年2ヶ月をかけてヴェロニカさんのアトリエ訪問を行いました。子どもから大人まで様々な人がヴェロニカさんのもとに集い、土を探すところから陶器づくりを教えていただきました。 今回の大地窯展ではヴェロニカさんの作品とともに、陶器づくりにとどまらなかったこれらの活動の様子と、参加した方々の作品の一部やよせられた詩、また新美志保さんの撮ってくださった記録写真をあわせて紹介させていただきます。 ヴェロニカさんは全ての日に在廊なさる予定です。 最終日には笙奏者の大塚惇平さんと「もび」主宰の西井夕紀子による小さな演奏会(投げ銭制)を予定しております。 このような機会をくださったヴェロニカさんに感謝をいたしますとともに、皆様のご来場を心よりお待ちしております。 西井夕紀子 ============================================ 「大地窯展」−若者たちと大地窯の出会いによる作品展− 2015.9.25(金)― 10.4(日) 11:00am─7:00pm(月曜定休) 最終日10.4(日)3:00 pm─ 大塚惇平(笙奏者)と西井夕紀子(作曲家)によるライブ演奏 投げ銭制 会場:「LIBRE」 〒113−0031 東京都文京区根津2-29-4 (東京メトロ千代田線根津駅より徒歩5分) tel.03-3827-1925 写真:新美志保 #
by oochigama
| 2015-09-21 18:19
| 展覧会のお知らせ
猛暑が続く今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
6月のFive Hands 〈五つの手〉は盛況のうちに終えることができました。 ご来場いただきました方におかれましてはこの場をお借りして感謝申し上げます。 さて、ヴェロニカさんより秋の展覧会のお話を伺いましたのでお知らせします。 今回の根津での展覧会は前回の2013年の展覧会から2年ぶりとなります。 会場へ足をお運びいただきご覧いただければ幸いに思います。 皆様のご来場をお待ちしております。 ------------------------------------------------------------------------- 「大地窯展」 2015.9.25(金)― 10.4(日) 会場:「LIBRE」 〒113−0031 東京都文京区根津2-29-4 (東京メトロ千代田線根津駅より徒歩5分) tel.03-3827-1925 by masa #
by oochigama
| 2015-08-10 21:10
| 展覧会のお知らせ
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